診療報酬ファクタリングの仕組みと流れ、メリット・デメリットについて
一般的な法人だけではなく、医療機関にとってキャッシュフローの困窮は身近な問題です。その背景には、診療報酬が振り込まれるまでの2カ月というタイムラグがあります。こちらでは、医療機関のキャッシュフロー改善に役立つ、診療報酬ファクタリングの仕組みや流れ、メリット・デメリットについてご案内します。
診療報酬ファクタリングとは?
診療報酬ファクタリングとは、医療ファクタリングの一種であり、医療債権(診療報酬をもらう権利)を売却する方法です。売掛先は、国保や社保となります。キャッシュフローに余裕がなくなりがちな大病院や、そもそも資金力に乏しい開業したばかりのクリニックなどが利用するファクタリングです。
診療報酬ファクタリングの仕組み
診療報酬ファクタリングでは、ファクタリング会社と医療機関の間での債権譲渡契約締結後、国保・社保へ譲渡通知が通達されます。その後、社保・国保への請求金額の範囲内で入金が行われます。診療報酬の支払いは社保・国保からファクタリング会社へ直接行われ、医療機関を経由することはありません。
ファクタリングには売掛先が直接関与しない2社間ファクタリングと、売掛先が関与する3社間ファクタリングがありますが、診療報酬ファクタリングの場合は原則として3社間ファクタリングです。
診療報酬ファクタリングの流れ
診療報酬ファクタリングは、一般的に以下のような流れで進められます。
1.医療機関、診療報酬(8割程度)を国保(社保)へ請求
2.ファクタリング会社に診療報酬債権を譲渡
3.診療報酬債権譲渡を国保(社保)へ通知
4.国保を交えた3社間ファクタリング
5.手数料を差し引いた金額がファクタリング会社より振り込まれる
6.国保(社保)からファクタリング会社へ診療報酬が満額支払われる
おおまかな流れは、一般的な法人が利用するファクタリングと大きな違いはありません。
診療報酬ファクタリングのメリット
診療報酬ファクタリングはメリットの大きさから、多くの医療機関に利用されています。以下では、具体的なメリットをご紹介します。
診療報酬を即現金化
一般的に、診療報酬は支払いまでに2~3カ月程度かかります。その間にも家賃、スタッフへの給与などの支払いに迫られるため、キャッシュフローがひっ迫する医療機関は少なくありません。
例として、8月に医療サービスを提供したとしても、診療報酬が入金されるのは早くても10月となります。この決して小さくない支払いサイクルのずれは、多くの医療機関で問題となっています。
診療報酬ファクタリングであれば、医療債権の発生後、すぐに現金化できるため、その間の支払いに対応できます。人件費の支払いや機器のメンテナンス費用として充当できるため、キャッシュフローに余裕が生まれるでしょう。
国相手の債権なので信用力が高い
ファクタリング会社は回収のリスクを債権の信用度から判断します。信用度が低い債権は、手数料を高く設定されたり、そもそも買い取りを断られたりするケースも少なくありません。
その点、診療報酬ファクタリングの売掛先は国保・社保、つまり国であるため、信頼性に関しては申し分ありません。安定した額で買い取ってもらえることが多いほか、ファクタリングとしては破格の0.5%程度の手数料で取引できる場合もあります。
診療報酬ファクタリングのデメリット
上述したメリットの一方で、診療報酬ファクタリングにはデメリットもあります。利用する際は、以下のようなデメリットについても把握しておかなければなりません。
請求額を満額受け取れない
診療報酬含む医療債権の上限買取額は請求額の8割が相場です。国保から満額支払いが認められるかどうかは請求時点では確定していないため、この額にとどまります。残りの債権額に関しては、レセプト審査に通り、国保・健保が支払われたタイミングで入金されます。
満額が入金されるまではタイムラグがあるため、入金額が希望額に満たない場合は、他の方法で資金調達する必要があります。
売却できるのは2カ月の債権まで
原則として、売却できる診療報酬は2カ月分までと定められています。上限についてはファクタリング会社によりますが、2カ月分以上の買い取りでは手数料を高く設定されるケースが大半です。
2カ月分の債権売却でキャッシュフローを回復できない場合は、やはり他の資金調達方法を併用する必要があるでしょう。
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人件費、機器のメンテナンスなど、医療機関には避けられないコストがあります。診療報酬ファクタリングを用いれば、キャッシュフローに余裕が生まれるでしょう。医療債権は信頼性が高く、他の債権よりも好条件で買い取ってもらいやすいのも魅力です。手数料が発生するため継続的に利用するのはおすすめできませんが、計画性があれば、医療機関の資金難を立て直すために大いに役立つはずです。キャッシュフローがひっ迫している医療機関様は、診療報酬ファクタリングのご利用を検討してください。