ファクタリングにおける売掛金の扱われ方は?仕訳方法もご紹介
借入に頼らない資金調達方法として注目が集まるファクタリング。しかし、経理上どのように捉えられるのか、いまいちイメージできないという方も多いでしょう。そこで今回は、ファクタリングにおける売掛金の扱われ方の概要や、実際の仕訳方法を解説します。
そもそも売掛金とは? ファクタリングの考え方
まずは売掛金の考え方について、簡単に説明します。
簡潔に表すなら、売掛金とは後日に支払われる売上金のこと。その時点ではまだ入金がなされていない債権であり、一時的な未回収金と言えます。そのため、賃借対照表では流動資産に分類されます。
たとえば4月に500万円分の商品を納入したとします。請求書払いとし、期日が翌々月末となっている場合は、6月までこの500万円は債権として扱われます。ちなみに、会計上では「販売企業側が500万円の売掛債権を持っている」という考え方になります。
ファクタリングは売掛金を早く回収する方法
では、売掛債権をファクタリングした場合にはどのような考え方になるのでしょうか。
大枠で見た場合、ファクタリングは未回収の売掛金を本来の期日より早く回収する方法と言えます。ただし、回収先は売掛先ではなくファクタリング会社です。正しくは譲渡ですが、イメージとしてはファクタリング会社が売上債権を買い取った形になります。
売掛債権の時価はゼロとみなされる
売掛金は財務上、金融資産に該当します。同じく金融資産である有価証券などは、譲渡の際に時価で資産計上をしなくてはなりません。しかし、売掛債権は時価での算出が難しいという性質を持っています。
そこで日本公認会計士協会の「金融商品会計に関する実務指針」では、“一般的に取引されるものではない”金融資産については、時価計算を不要とし、ゼロで計上可能としています。
ファクタリングの手数料は非課税
ファクタリングを行う際には、手数料をファクタリング会社に支払わなくてはなりません。一般的な額は、2社間ファクタリングでは売掛債権の10~30%、3社間ファクタリングでは1~15%です。
なお、この手数料は非課税となります。あくまでも消費税が課せられるのは、手数料を差し引いた売却額分となる点に注意しましょう。
ファクタリングの仕訳方法
それではここから、ファクタリングを実際に仕分ける際の記述を見ていきましょう。以下は、3社間ファクタリングを行った場合です。
売掛債権発生時の仕訳
まずは売掛債権が発生した際の仕訳です。ファクタリングの実施にかかわらず、掛取引をした場合の基本的な記載方法は変わりません。
■取引先Aに商品500万円を販売した。代金は翌々月回収予定。
貸方 | 金額 | 借方 | 金額 |
売掛金 | 500万円 | 売上 | 500万円 |
ファクタリング契約締結時の仕訳
次にファクタリング会社と契約を結んだ時点での仕訳です。この時点では、売掛債権をファクタリング会社に譲渡したという考え方になります。入金はまだされていないので、「未収金」を使います。
■ファクタリング会社とファクタリング契約を締結。取引先Aへの売掛金をファクタリングした。
貸方 | 金額 | 借方 | 金額 |
未収金 | 500万円 | 売掛金 | 500万円 |
なお、未収金とは“通常の営業取引で発生していない”金銭債権を処理する際の勘定科目です。未収入金を使っても構いません。上記の場合、ファクタリング契約は通常の営業取引ではないためこの科目が用いられます。
ファクタリング会社からの入金時の仕訳
ファクタリング会社から入金がなされた際の仕訳です。ファクタリング手数料が差し引かれた400万円が入金されたことを表しています。
■ファクタリング会社から400万円の入金があった。
貸方 | 金額 | 借方 | 金額 |
普通預金 | 400万円 | 未収金 | 500万円 |
売上債権売却損 | 100万円 |
売上債権売却損とは、その名称が示すとおり売上債権を売却した際に出た損失を表す勘定科目です。分類としては、営業外費用にあたります。雑損失や支払手数料と同様の扱いとなるため、これらの勘定科目を用いても構いません。また、手形取引で用いられる割引料を用いる企業もあります。
売掛先からの入金時の仕訳(2社間ファクタリングの場合)
2社間ファクタリングの場合は、売掛先から入金がされます(ファクタリングのことを売掛先は知らないため)。この場合は、将来支払う「預り金」として処理を行います。
■売掛先から500万円の入金があった。
貸方 | 金額 | 借方 | 金額 |
普通預金 | 500万円 | 預り金 | 500万円 |
その後、ファクタリング会社へ送金をした場合は、以下の仕訳を行います。
貸方 | 金額 | 借方 | 金額 |
預り金 | 500万円 | 普通預金 | 500万円 |
※振込手数料は割愛しています
まとめ
仕訳を見ていただければ分かるとおり、ファクタリングには「借入」という勘定科目が登場しません。帳簿上はあくまで「売掛債権を譲渡した」だけと扱われます。
一般的な融資であれば、借入を行ったことで賃借対照表の負債の部が大きくなってしまいます。しかしファクタリングであればそうした心配は無用。資金調達と売掛金の圧縮が同時に行えるため、賃借対照表のスリム化が実現します。この効果も、ファクタリングの大きなメリットと言えるでしょう。