ファクタリングで必要な「登記」の意味

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ファクタリングを利用するうえで避けて通れないのが「登記」です。こちらでは、登記の意味や、ファクタリングで求められる「債権譲渡登記」についてお話しします。

そもそも登記とは?

登記とは、「物」「事」に対して権利を有している事実を登記簿に記載し、社会的に公示するための制度です。登記をしている場合、対象の「物」「事」への権利は社会的に守られていることになります。登記の窓口であり、手続きを取り扱うのは法務局の登記所です。

代表的な例として、以下のような登記が挙げられます。

不動産登記

不動産登記は土地や建物が対象となる登記です。その土地や建物の所有者を対外的に公示するために行われます。

商業登記

商業登記とは、会社の情報を公示するための登記です。商業登記を行わなければ社会的に会社として認められないため、会社を設立した際には原則として必ず行われます。

法人登記

法人登記は商業登記と同様に会社を対象とした登記です。商業登記では基本的に営利目的の会社が対象ですが、法人登記の場合はNPO法人や学校法人、宗教法人など非営利の法人も対象になります。

動産譲渡登記

動産譲渡登記とは企業の動産が対象となる登記です。動産と担保にして融資を受ける際に利用されます。登記された動産はすでに担保設定されていることが公示されているため、第三者への融資で重複して担保として利用することはできません。

ファクタリングで必要なのは「債権譲渡登記」

ファクタリングの際に必要となる「債権譲渡登記」についてお話しします。

債権譲渡登記とは

債権譲渡登記とは債権の「第三者対抗要件の具備」を証明するための権利です。簡単に言えば、債権の譲渡を社会的に公示するための登記であり、登記簿には債権の譲渡元、譲渡先、日付などが記載されます。

第三者対抗要件の具備

「第三者対抗要件の具備」とは、優先的な回収権を守るための権利です。第三者対抗要件の具備がある場合、第三者が回収権を主張したとしても優先的な回収権がある債権者の権利が守られます。

債権譲渡登記の役割

ファクタリングで債権譲渡登記が求められるのは、債権の「二重譲渡」を防止するためです。

ひとつの債権を2社のファクタリング会社に売却した場合、売掛先から支払いがあったとしてもファクタリング会社2社の回収権は両立し得ません。そもそも、このような二重譲渡を行った場合、詐欺罪の対象となる可能性があります。回収権の優先度を主張し、二重譲渡を防止するために必要なのが債権譲渡登記です。

登記簿には日付が記載されているため、日付の早い債権譲渡登記を有しているファクタリング会社の権利が優先されます。また、ファクタリングの利用者が万が一売掛金を支払えなかった場合、ファクタリング会社の訴訟の後ろ盾として債権譲渡登記が利用されることもあります。

債権譲渡登記の費用

債権譲渡登記には以下のような費用が発生します。

  • 債権個数が5,000個以下の場合: 1件あたり 7,500円
  • 債権個数が5,000個を超える場合: 1件あたり 15,000円

また、司法書士などに手続きを依頼する場合、3万円~5万円の報酬支払が別途必要です。

債権譲渡登記のメリット

ファクタリングの利用者にとって、債権譲渡登記には以下のようなメリットがあります。

2社間ファクタリングが選べる

メリットのひとつは、利用者とファクタリング会社の2社のみで手続きを行う2社間ファクタリングを選べる点です。売掛先を介さないため、ファクタリングの利用を周知する必要はありません。

債権譲渡登記の制度が始まったのは平成10年のことです。それ以前は第三者対抗要件の具備のため、売掛先への通知が必要でした。現在は債権譲渡登記があるため、2社間ファクタリングが選択可能になっています。

手数料が割安になる

利用者の二重譲渡はファクタリング会社にとって防止しなければならない事態のひとつです。そのため、債権譲渡登記はファクタリング会社にとってリスクを軽減する方法のひとつといえます。このことから、債権譲渡登記を条件に手数料を割安に設定しているファクタリング会社もあります。

ファクタリング会社の選択肢が広がる

現在は、多くのファクタリング会社が債権譲渡登記を利用条件として設定しています。債権譲渡登記を許容できれば、ファクタリング会社の選択肢が大幅に広がることになります。

債権譲渡登記のデメリット

上述したメリットの一方、債権譲渡登記には以下のようなデメリットがあります。

売掛先に知られてしまう可能性がある

上述したように、2社間ファクタリングでは原則として売掛先にファクタリングの利用を知らせる必要はありません。しかし、債権譲渡登記は公式な情報のため、売掛先が登記情報を調べればファクタリングの事実を知ることは可能です。ファクタリングの利用を非公表にしたい場合も、決して完璧な方法ではないといえます。

費用や手間が発生する

債権譲渡登記の費用はファクタリング利用者にとって決して小さくない負担です。自身で行う場合は煩雑な手続きが発生します。また、ファクタリング会社を利用する際は、利用料金に債権譲渡登記の費用が含まれているのかどうか確認が必要です。

まとめ

原則として、2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が求められます。不要な場合もありますが、手数料は高くなる傾向があるため事前に確認が必要です。今回ご紹介した債権譲渡登記の概要を理解し、手数料や登記の手間・費用のバランスを検討してファクタリング会社を選んでいただくようにおすすめします。