おさえておきたい将来債権ファクタリングの基本的なポイント

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将来債権ファクタリングという手続きをご存知でしょうか。民法の改正により現実的となった新しい形のファクタリングです。こちらでは、将来債権ファクタリングの基本的なシステムやメリット、現状考えられる問題などについてお話しします。

将来債権ファクタリングとは

まずは、将来債権ファクタリングの概要についてお話しします。

ファクタリングは売掛債権を売却する手続きです。正確に言えば、通常は「請求が確定している売掛債権」が取り引きの対象として扱われます。先立ってファクタリング会社から売掛金相当の金額を受け取り、売掛先からの支払い後にファクタリング会社への返金する取り引きです。

対して、将来債権ファクタリングでは請求が確定していない売掛債権、つまり入金が本格的に決まっていない売掛債権でも売却できます。翌々月、さらに次の月といった未来の売掛債権も将来債権ファクタリングを利用すれば売却可能です。

2020年4月1日施行の改正民法では、将来債権の譲渡が明文化されることになりました。つまり、将来債権ファクタリングサービスの提供が可能になったことを意味します。今はまだ提供しているファクタリング会社が少なく新興のサービスといえますが、今後徐々に一般的になっていく見込みです。

将来債権ファクタリングのイメージ

将来債権ファクタリングの利用イメージを簡単にお伝えします。

例として、

300万円の資金を調達したい場合、通常のファクタリングでは請求が確定している売掛債権、通常は翌月支払いの売掛債権を300万円分売却し、ファクタリング会社から売掛金を受け取ります。売掛先から入金されたタイミングには、300万円と対応する手数料をファクタリング会社に支払わなければなりません。

対して、将来債権ファクタリングでは請求確定前の未来の売掛債権を含めて300万円分を用意することになります。また、返済は債権の履行タイミングで求められるため、300万円と手数料を分割で支払っていくような形になります。

最もたる違いは、売掛金と手数料返済の負担を分散できる点です。300万円の調達のために、履行タイミングが異なる100万円の売掛債権を3つ売却する場合、100万円と手数料の返済の時期を分けて3回行うことになります。

ニーズの増加が予想される将来債権ファクタリング

ファクタリングはキャッシュフローに困窮した場合の解決策として利用されています。一度ファクタリングによって改善し、その後は健全なキャッシュフローを維持することが理想です。簡単に言えば、「ファクタリングの利用は一度にとどめるのが好ましい」といえます。

実際には、ファクタリングによって一時的にキャッシュフローが改善されたとしても、返済によって再度困窮してしまう企業が少なくありません。なかには、永続的にファクタリングに頼ってしまう企業の例もあります。このような状況は、実質的にはキャッシュフローが改善されたとはいえません。

将来債権ファクタリングであれば、返済を分割で行えるため適切に利用すれば健全なキャッシュフローを維持することもできます。根本的な改善をしやすいため、今後のニーズ増加が予想されるファクタリング方法です。

将来債権ファクタリングのハードル

利用会社にとってメリットが大きい将来債権ファクタリング。民法改正以降普及が待たれています。一方で、時間の問題以外にも普及に関するハードルがいくつか指摘されています。

最もたるハードルといえるのが、ファクタリング会社にとってのリスクです。請求未確定であるということは、売掛金が支払われるかどうかわからないということ。基本的にファクタリングはノンリコースであるため、ファクタリング会社としてはシビアに判断せざるを得ません。

多くのファクタリング会社は将来債権の信頼性を厳しく審査したうえで将来債権ファクタリングの可否を判断します。将来債権である特性上、”極めて”信頼できる売掛債権でなければ審査通過は難しいでしょう。大企業や上場企業など取引先の信頼度が高い、あるいはこれまでに継続的な取り引きがあった、といった条件がそろっている必要があります。

また、懸念されるのは手数料の増加です。通常、売掛債権のリスクが大きいと判断したファクタリング会社は、買い取りを拒否、手数料増加によるリスクのカバー、のいずれかを選択します。手数料が高い場合、返済の分散は可能ですが、支払額の総額は大きくなってしまい、期待していたほどのメリットは得られなかった……という事態も十分に考えられます。

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将来債権ファクタリングについてお話ししました。まだ提供しているファクタリング会社は少なく、さらに売却できる売掛債権も限定されますが、根本的なキャッシュフロー改善をのぞむのであれば検討していただきたいサービスです。調達しなければならない資金の額によっては、通常のファクタリングとあわせて考えてみてはいかがでしょうか。