ファクタリングで債権譲渡登記が必要な理由

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債権譲渡登記という制度についてご存知でしょうか。基本的に、ファクタリングの利用に際してはこの債権譲渡登記を行う必要があります。こちらでは、債権譲渡登記の概要や必要性、メリットや注意点などについてお話しします。

債権譲渡登記とは

「登記」とは、法人、不動産、財産などの権利関係を公に周知する法的制度です。債権譲渡登記も登記の一種であり、名前からわかるとおり「債権が譲渡されたこと」を周知する制度を意味します。ファクタリングでは、基本的にこの債権譲渡登記を行う必要があります。

登記情報の内容

債権譲渡登記では以下のような情報が公開されます。

・譲渡人情報

・譲受人情報

・売掛先情報

・債権金額

・売掛債権の発生日

登記情報の閲覧方法

登記情報は以下のような方法で確認できます。

登記事項証明書

東京法務局 中野出張所では「登記事項証明書」という書類を取り寄せることができます。上述した情報が記載されているため、売掛債権が譲渡されているかどうかを判別可能です。ただし、その売掛債権の利害関係者しか取り寄せることはできません。なお、「登記事項概要証明書」という簡易的な書類もありますが、記載内容が制限されているため、売掛債権の譲渡については詳細がわかりません。さらにシンプルな「概要記録事項証明書」という書類もあり、こちらは全国の法務局で手に入ります。

登記情報提供サービス

「登記情報提供サービス」は登記情報を閲覧できるインターネットサービスです。誰でも簡単に登記情報を確認できます。情報の内容は、上述した概要記録事項証明書と同等です。

ファクタリングと債権譲渡登記

ファクタリングには、利用者とファクタリング会社のみで行う2社間ファクタリングと売掛先を交えて行う3社間ファクタリングがあります。2社間ファクタリングでは通常、債権譲渡登記が必須条件です。これには、以下のような理由があります。

ファクタリング会社にとって債権譲渡登記は“保険”

1つの売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する行為は詐欺に該当します。二重譲渡されると当然ながら売掛金を回収できなくなってしまう可能性があるため、ファクタリング会社にとっては避けなければならない事態です。

債権の所有権は先に登記した所有者が優位です。そのため、債権譲渡登記をしておけば二重譲渡を防止できます。このことから、債権譲渡登記はファクタリング会社にとって“保険”ともいえる方法です。

債権譲渡登記で2社間ファクタリング可能に

ファクタリングには元来、売掛先を交えた3社間ファクタリングしかありませんでした。3社間ファクタリングは利害関係者がすべて合意したうえで進められます。このことからトラブルが少ない手法ですが、利用会社にとっては「資金繰りが困窮していると思われかねない」「心証が良くない」など、問題が多かったのも事実です。

債権譲渡登記が登場したことにより売掛債権の所有者を明確にすることができるようになり、2社間ファクタリングが現実的に可能になりました。2社間ファクタリングの「資金提供スピードが速い」「手続きが簡単」といったメリットも、債権譲渡登記によって支えられています。

債権譲渡登記の注意点

ファクタリングの可能性を広げた債権譲渡登記ですが、以下のような注意点もあります。

売掛先の信頼を損なう恐れ

債権譲渡登記によって2社間ファクタリングが可能になります。しかし、売掛先に通知をする必要がないだけであり、ファクタリングの利用を知られないことが保証されているわけではありません。債権譲渡登記の内容は上述したような方法で誰でもできます。仮に売掛先が債権の情報を調べれば、ファクタリング利用の事実は簡単に判明してしまうでしょう。結果的に売掛先の信頼を損ねてしまう恐れがあります。

信用情報に影響も

債権譲渡登記を行うと、信用情報にも影響があります。融資を受ける際などは審査で信用情報が参照されますので、融資を受けづらくなってしまう可能性は否定できません。

債権譲渡登記なしでファクタリングは可能?

上述したリスクを懸念し、債権譲渡登記なしファクタリングが可能なのか気になる人は多いかもしれません。

債権譲渡登記なしでの2社間ファクタリングに対応しているファクタリング会社もあります。しかし、こうした取引はファクタリング会社にとってリスキーです。基本的にファクタリング会社はリスクが高い申し込みに対し、審査を厳しくするか手数料を上げる措置をとります。

ファクタリング会社との間で信頼関係が構築されていれば、好条件で債権譲渡登記なしの2社間ファクタリングを利用できるケースがあるかもしれません。まずは、ファクタリング会社との入念な打ち合わせから始めてみましょう。

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債権譲渡登記についてお伝えしました。ファクタリングにとって欠かすことができない制度であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。面倒な面や不完全な面もありますが、2社間ファクタリングが実現できるのはこの制度があるおかげです。より詳しく知りたい場合は、ファクタリング会社に相談してみましょう。