ファクタリングと貸金業法の関係
日本においては、ファクタリングに関する正しい理解が進んでいません。違法な闇金業者とファクタリング会社を同一視する見方さえもあります。しかし実際には根本から性質の違うものです。こちらでは、その明確な指針となる貸金業法の概要や、ファクタリングに貸金業法が適応されない理由についてお話しします。
貸金業法とは
貸金業法とは、貸金業者に対して登録制度や規制を定めた法律です。適応される代表的な貸金業者として、クレジットカード会社や消費者金融などが挙げられます。不適切な貸金業者から消費者を守ることが、制定の主な目的です。
貸金業法の内容
貸金業法では、貸金業者が遵守すべきルールが細かく定められています。主な4つのポイントを以下で詳しくご説明しましょう。
総量規制
総量規制は借入れ額を制限する規則です。貸金業法では原則として、借入れできる額の総量は年収の3分の1以下までと定められています。この総量規制に沿うため、通常、貸金業者から借入れする際には、源泉徴収票・所得証明書など年収を証明する書類の提出が求められます。
上限金利
2010年の貸金業法改正により、貸金業者が設定できる金利の上限は15~20%になりました。それ以前は、出資法と利息制限法という金利に関する2つの法律で定められた上限金利に相違があり、出資法の上限金利である29.2%(グレーゾーン金利)を設定している貸金業者が多数を占めていました。改正によりグレーゾーン金利は撤廃され、現在も上限金利を超える金利を設定している業者は行政処分の対象になります。また、貸金業法改正以前に支払っていた利息は「過払い金」として取り戻せる可能性があります。
みなし弁済の廃止
改正前の利息制限法では、上限金利を超える金利設定が一定条件において認められていた。借り主が利息に対して納得していることや、貸金業法17条、18条に関する書面交付が主な条件です。こうした金利設定による利息の支払いを「みなし弁済」と呼びます。
貸金業法改正によりみなし弁済は完全に廃止されました。上限金利を超える金利設定は、債務者の任意であったとしても違法とみなされます。
闇金への厳罰
貸金業法改正によって、登録なしで貸金業を行う闇金業者への罰則が強化されました。現在、闇金業者には刑事罰が適応され、懲役5~10年の刑が課されます。また、過激な取り立て行為への規制も強化されており、闇金業者の運営を抑止しています。
ファクタリングには貸金業法が適応されない
「債権を担保に資金を調達できる」という性質上、ファクタリングは貸金業と混同されることがあります。しかし、現状ではファクタリングに貸金業法は適応されません。理由として、以下の2点が挙げられます。
ファクタリングは売掛債権を譲渡・売買する取引
ファクタリングはファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、売却する取引です。融資とは大きく性質が異なり、貸金業には分類されません。また、一般的なファクタリングはノンリコースであり、売掛先から売掛金が支払われず貸倒れになった際も、ファクタリング利用会社に返済義務はありません。この性質も、多くの貸金業者と異なっています。
貸金業はBtoC・ファクタリングはBtoB
「BtoC」は「Business to Consumer(Customer)」の略であり、事業者と個人の間で交わされる取引を意味します。一般的な貸金業はBtoCです。対してファクタリングが原則として、事業者と事業者の間で交わされる「BtoB(Business to Business)」の取引です。このような取引形態の違いも、ファクタリングに貸金業法が適応されない理由のひとつとして挙げられます。
ファクタリングを装った闇金業者に注意
古くからファクタリングのサービスが普及している欧米と比較して、日本ではファクタリングに関する法整備が追い付いていないのが現状です。ファクタリング自体は決して違法行為ではないが、ファクタリングを装った闇金業者が存在しているため注意しなければなりません。
以下のようなファクタリング会社は闇金業者である可能性を疑い、警戒することをおすすめします。
- 契約書を発行しない
- 手数料が高額
- 取り立てが過剰
- 契約内容の説明が雑
もし、ファクタリング会社を装った闇金業者を利用してしまった場合は、早急に弁護士へ相談し、契約解消へと向かうのが賢明な判断といえるでしょう。
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過去にはファクタリング会社が闇金業者として逮捕された例がありますが、ファクタリング自体は違法性がないクリーンなサービスです。しかし、賃金業法が適応されず法制整備が十分ではないため、現在はファクタリングを装った闇金も少なくありません。資金調達の方法を探している企業にはファクタリングを選択肢のひとつとして検討していただきたい一方で、闇金業者を利用しない慎重さも求められます。今回ご紹介した貸金業法の概要を、ファクタリングを利用するうえの基礎的な知識として覚えていただければ幸いです。