飲食業が注目している「クレジット債権ファクタリング」 特徴や仕組み、違法性は?

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クレジット債権(売掛債権)を活用した資金調達手段、クレジット債権ファクタリングについて解説します。“コロナ禍”の昨今、飲食店などBtoCビジネスかつキャッシュが不足しがちな業種で注目されている資金調達方法です。クレジットカード決済を導入している事業者の方は、参考としてお読みください。

クレジット債権ファクタリングとは?

顧客がクレジットカードで支払いを行うと、一時的にクレジットカード会社が立て替えを行い、後程クレジットカード会社が事業者側に支払いを行います。つまり、事業者側はクレジットカード会社に対して請求する権利(売掛債権)を有しているということです。この売掛債権を活用したファクタリングをクレジット債権ファクタリングと呼びます。

クレジットカード決済を行っている事業者であれば利用できる資金調達方法です。BtoCのビジネス、かつキャッシュフローが悪化しやすい業種に最適といわれています。

一般的な買取ファクタリングはBtoB、企業間取引において生じた売掛債権が活用されます。クレジット債権ファクタリングの場合、「クレジットカード会社との間で発生した債権」を用いるため呼称は違えど、事実上、買取ファクタリングとの差異はありません。

クレジット債権ファクタリングの仕組み

一般的なファクタリングは、売掛先との間で発生した売掛債権をファクタリング会社へと売却し、売掛金相当の金額を調達します。その後、売掛先から入金があれば手数料を上乗せしてファクタリング会社へと支払います。

こうした一般的なファクタリング手続きでの「取引先」が「クレジットカード会社」に置き換わったのが、クレジット債権ファクタリングです。

クレジット債権ファクタリングは違法?利用時のリスクは?

クレジット債権ファクタリングについて違法性を指摘する声もあります。しかし、大前提として、クレジット債権ファクタリングは違法ではありません。後述する債権譲渡禁止特約が無効となったためです。ただし、利用にはいくつかのリスクがあります。以下では、債権譲渡禁止特約と、クレジット債権ファクタリングのリスクを解説します。

民法改正で無効に!「債権譲渡禁止特約」とは?

「債権譲渡禁止特約」とは、第三者へ売掛金を譲渡することを禁止する特約のことです。特約付きの債権はファクタリング会社に売却することができません。クレジットカードは提携契約する際、債権譲渡禁止特約が契約書に明記されています。

そのため、以前はクレジット債権ファクタリングは利用できませんでした。

しかし、2020年4月の民法改正により、売掛債権に付与されている債権譲渡禁止特約が無効になっています。その結果、ファクタリングを利用しやすくなり、クレジット債権ファクタリングも民法に抵触することなくできるようになりました。

クレジット債権ファクタリングを利用できる業種は少ない

上述したようにクレジット債権ファクタリング自体に違法性はありません。ただし、ファクタリング会社の多くは、クレジット債権ファクタリングのなかでも債権譲渡禁止特約が付随する債権は買取拒否するのが実態です。これはクレジットカード会社とのトラブルを回避するためです。つまり、クレジット債権ファクタリングは、「違法ではないがほぼ利用できない資金調達手段」ともいます。

カード会社とのトラブルに発展するケースも

クレジットカード会社との契約で、「債権譲渡禁止特約」が付いていない場合、2社間ファクタリングならば利用できる可能性はあります。ただし、クレジットカード会社に債権譲渡通知がなされた場合、契約者との提携を解消されるリスクがあります。法的には問題ありませんが契約違反であることは事実のため、ファクタリング会社への心象は良くありません。

クレジット債権ファクタリングはBtoCビジネスの救世主になるか?

クレジット債権は資金調達方法として、一般的になっていくのでしょうか? 結論からいえば、ポテンシャルは秘めているが、現状は難しいといえます。違法性はないものの、とりわけファクタリング会社側が、譲渡制限特約を起因としたトラブル発展を懸念しているためです。大手ファクタリング会社を筆頭に、譲渡制限特約付きの債権は買取拒否していることが大きな障壁となっています。使いたくても、ほとんど使えないのが実情です。

ただし、ファクタリング自体は優れた資金調達手段であることは事実です。カード会社を経由する以上、クレジットカード売上げの資金化はリスクがともないますが、一般的な企業間取引において生じた売掛債権の譲渡ならば問題ないでしょう。クレジット債権ファクタリングを検討する前に、まずは買取ファクタリングから検討することをおすすめします。

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クレジット債権ファクタリングの概要や有用性についてお伝えしました。今後、資金調達方法として普及していく可能性はありますが、現状は通常のファクタリングのほうが一般的です。ファクタリングの種類のひとつとして知っておいて損はありませんが、現在は通常のファクタリングを優先的に検討しましょう。